この雪はどんな人の上にも降っているんだ

 今日は忘れてしまうことが多かった。でも、どんなに忘れようと思っても忘れられないのが、明日だ。センター試験。この響きを聞くだけで、あと再来年には自分がいるんだ。
 受験生にかける言葉って、頑張れなのかな。それとも、負けないでなのかな。
試験って、人生を大きく左右させる。たった紙切れ一枚が。まるで、お札のように。たった一枚の紙、それはきっと50円にも満たない、10円にも満たないのかも知れない。受験生が持つ、答案用紙などは、刑務所でコピーされると聞いたこともある。実際はどうかはわからないけど、何ヶ月もかけて、テストを作り出した人は、引っ掛けや、だましを用意している。
 そう、何気ない話をしていた日、笑っていた日、転んでいた日、嬉しかった日、そんな日に、着々と、人を幸せにする、不幸にする紙は作られてきたのだ。
 それが、明日解禁というわけで、どんなにそれが緊張するか、どんなに眠ることが恐ろしいか。
 だから、何も言わずに応援する。たとえ今日が記念すべきであろう日と、かまわず明日に向かう。そんな姿がいつもまぶしい。だから嫉妬した。ごめんなさい。
 いつのまにか、追い越せなくなった背中に、かける言葉が見つからなくて、つい口がへの字に曲がってしまうけど、本当は応援しています。
 こんなときにしか、心から祈れない自分がいて嫌だけど、祈ります。彼を幸せにしてください。この先、センター試験の後に残された、本命の試験も歩けど、まず第一歩のあした。彼を導いてください。
 かつて、私が受験したとき、家から、誰よりも遠かったため、早く家を出て、心細かったとき、奇跡が起こった。見知らぬ町に来て、予定より一本はやい電車に乗って、受験会場に無事到着。
 けれども、私がのった電車より後、つまり予定していた電車は、事故のため、遅れていたのだ。もし、あの時、早めの電車に乗らなければ、遅れていた。私の性格上、そういう場合焦ってしまうから、あの瞬間、私は運が勝ったと思った。
 受験なんて、言ってしまえば、やったもの勝ちだと思えるが、実際、確実といわれている人がサクラを見て、確実じゃなかったけどサクラを見れる、そんな人が周りにもいた。
 それを、単純に、運が悪かったね、とはいえないけど、どう転んでも、高校生は先がある。でも、大学は違う。だから一生懸命頑張るのだ。逃げ道はある。後ろを向かない。浪人生も、受験生も必死なんだ。一年のリーチがあるにしても、同じ舞台に立てばみな一緒。
 舞台に立っている役者に、主役はあるが、俳優という役で囲めば、みな同じ。受験生という俳優の中で、主役の座を勝ち取るのは、あなたであってほしい。